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小説「七色の毒」感想

2023年6月26日

*本ページはプロモーションが含まれています

以前読んだ中山七里さんの「刑事犬養隼人シリーズ」、
第2弾を読んでみました。

七色の毒

シリーズ第1作はこちら。

あわせて読みたい

七色の毒

作者:中山七里
出版社:角川文庫
価格:560円+税(2023.6.26現在)

あらすじ

中央自動車道を岐阜から新宿区に向かっていた高速バスが防護柵に激突。1名が死亡、重軽傷者8名の大惨事となった。運転していた小平がハンドル操作を誤ったとして逮捕されるも、慶弔捜査一課の犬養は事故に不信を抱く。死亡した多々良は、毎週末に新宿便を利用する際、いつも同じ席に座っていた。やがて小平と多々良の過去の関係が明らかになり・・・(「赤い水」)人間の悪意をえぐり出した、どんでん返し満載のミステリ集!

単行本裏表紙より

この本は7つの短編集になっています。
そのため、主人公はそれぞれ物語の犯人や被害者、その周りの人などで、
シリーズの主人公犬養刑事はすべてその事件にかかわる警察官で、わき役となっています。

「七色の毒」の言葉通り、
精神的な毒、物理的な毒、いろいろな毒がモチーフになっています。

収録

  1. 赤い水
  2. 黒いハト
  3. 白い原稿
  4. 青い魚
  5. 緑園の主
  6. 黄色いリボン
  7. 紫の供花

感想(ネタバレを含みます)

正直、私は長編の方が好きで、短編集って物足りなく感じるので、
この本は飛ばそうかな~、とも思ったのですが、
やっぱりシリーズものだから順番に・・・と思って読んでみました。

読んだ結果、
全然、物足りない、ということはなく、
どれも短いながらもドラマがあり、そして、どんでん返しもあり、
とても面白かったです!

ただ、「人間の悪意をえぐり出した」とあらすじにもある通り、
人の心が持つ「毒」が、全編を通して描かれています。

この作者は、前作の時もそうだったのですが、
人の心のむごいところも、殺人とかのむごいところも、
そのまま包み隠さず描写するので、
ちょっと読むのがつらくなる時があるんですよね。

なので、読むのをひるんでしまう時があるのですが、
それ以上にお話が面白いので、
どうしてもどんどん読みたくなってしまうのです。

頭のいい人なんだろうな~、とすごく思います。
あと、情に流されて借金の保証人とかには絶対にならない人なんだろうな~、という感じもします。イメージですがw

1 赤い水

高速バスの死亡事故の話。
しかしそれはただの事故ではなく・・・。

悲しい犯罪です。
やってしまったことはいけないけど、
そこまで人を追い詰めるのも人なんだ・・・と思います。

でも、もっと静かな毒があったことは、
最後まで気づきませんでした。

2 黒いハト

読んでいて一番つらかった話です。
いじめを苦に自殺した中学生の級友たちの話。

こんなストレートな毒。
でも、妙にリアルで現実世界にもたくさん蔓延している毒なのではないか、という怖さもありました。

3  白い原稿

こちらは、殺人かと思われた事件が、
実はそうではなかった、という話。
新しい知識が増えました。

でも、直接的な殺人ではないかもしれないけど、
やはり、誰かの悪意や殺意は人を殺すのだという、
見えない毒を感じました。

4 青い魚

女性に縁のない45歳の釣具屋オーナーと、若い内縁の妻、そしてその兄の話。

これが一番悲しい話だったかな、と思います。
なんとなく展開は見えていたのですが、
やっぱり、と思ったところと、意外、と思ったところと。

弱さは強さで、
強さは弱さで、

そこにひずみが生まれると毒が生まれるんだな、と思いました。

5 緑園の主

優等生の中学生の中毒死。
ホームレス狩り。
認知症の老婆と夫。

それが絡み合ってそれぞれの事件を成り立たせていきます。

これも、ある意味とても悲しい話でした。
悪意がなくても、毒は生まれるのだな、と思いました。

6 黄色いリボン

女装が趣味の、自分のアイデンティティに疑問をもつ小学生の男の子、
妹のフリをしていたら、
ある日、いるはずのない妹宛ての手紙が届き・・・。

ちょっとファンタジーっぽいのかな?と思ったら、
やっぱり犬養刑事の出番が来るような展開でした。

主人公の男の子の今後の幸せを願うばかりです。

7 紫の供花

これは1つ目の「赤い水」と話がつながっています。

最初に被害者の名前が出てくるのですが、
「あれ?」と思ってページを戻ってみると、
最初の話に出てきた人でした。

あのバス事故が起こした、悲劇。
毒は自分の意図しないところにも広がっていってしまう、そんな悲劇が描かれていました。

人は弱いけど、
その弱さに飲み込まれると、

自分や相手だけでなく、
他人にも毒がまわってしまう。

どうにか、毒をうまないように生きていきたいな、と思いました。

本当に、一つ一つの物語が濃いです!

そして、犬養刑事の鋭い人間観察の目がなければ、
見過ごされていた毒ばかりだったのだろうな、と思います。

短編集なのですべてわき役になっていますが、
それでも、他の刑事では話が成り立たない、
しっかりと犬養刑事シリーズになっているのだと思いました。

トコヨ

刑事犬飼隼人シリーズ

1~5が角川文庫、6はKADOKAWA単行本(2023.6.26現在)

  1. 切り裂きジャックの告白
  2. 七色の毒
  3. ハーメルンの誘拐魔
  4. ドクター・デスの遺産
  5. カインの傲慢
  6. ラスプーチンの庭

ドラマ化

この中の「白い原稿」を原作にして、
シリーズ第1作「切り裂きジャックの告白」の続編として沢村一樹さん主演でドラマ化されました。

映画だと色々見る手段がありますが、
土曜プライム、とかのドラマ枠だと、なかなか後から見ることができないですよね~。
見てみたかったです・・・。

トコヨ

短編でも、じゅうぶん読みごたえがあり楽しめました。
まだシリーズがあるので、これからも読み進めてみたいと思います♪

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