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吉本ばななの短編小説が原作になっているムーンライト・シャドウを観ました。
映画は2021年のものですが、小説は1988年に出版されたもの。
発売当時に読んだものだったので、とても懐かしい気持ちになりました。
映画
あらすじ
大学生のさつきは、恋人の等、等の弟の柊、そして柊の恋人のゆみこと、4人で楽しい毎日を送っていました。
一緒にご飯を食べたり、ゲームをしたり、おしゃべりしたり、何気ない幸せにあふれている日々でした。
しかし、ある日事故で等とゆみこが亡くなってしまいます。
愛する人を失った苦しさから逃れられないさつきと柊。思い出すのは、以前ゆみこが話していた「月影現象」。
それは、亡くなった人に会えるという奇跡です。
ある日、そんな二人の前に、麗という不思議な存在感のある女性が現れて・・・。
キャスト
さつき:小松菜奈
等:宮沢氷魚
柊:佐藤緋美
ゆみこ:中原ナナ
麗:臼田あさみ
監督
エドモンド・ヨウ
公開
2021年9月10日
感想
何せ原作を読んだのが35年前(・・・こわっ)だったので、
ストーリーはぼんやりとしか覚えていなかったのですが、あえて復習せずにそのまま観ました。
淡々と、本当に静かに進む映画なので、人によっては退屈に思うかもしれません。
特に大きな事件が起こるわけでもなく、
前半は4人の楽しい日常、後半はさつきと柊の日常になってしまった非日常、そして麗の登場と月影現象が叙情的に描かれます。
映画を観た後懐かしくなったので原作も読んだのですが、
意外と描き方が違う部分がありました。
ただ、核となる大切なセリフは原作そのままなので、世界観のようなものはちゃんとそのままです。
監督さんは、いったんこの小説を読み込んで自分の中に取り入れて、
そして、この映画を生み出したんだな、と思いました。
自分の胸に痕をつけた部分を抽出して吐き出している感じなので、
原作よりももっとそぎ落とされた、煮詰まったような感じがします。
吉本ばななの小説は、初期のものしか読んでいないのですが、
「親しい人との突然の死別」と「食べること」がよく出てきます。
登場人物たちにとって、「死」が日常になり、
全員が経験するわけでもない「喪失の非日常」の中に放り込まれ絶望し、苦しみ、
だけど、希望を探している、そんな風に見えました。
そして、「食べる」ことが「生きる」ことの象徴として、すごく大切に描かれています。
みんな、表面的な楽しさとか野望とか計画とか、そんなんじゃなくて、
内側にあるもっと本能的なもの?生と死?精神?うまく言えないのですが、流れながら?生きている感じがしました。
死を抱えながらも生きていく。
原作の方が、「川」の描き方が潔いような感じがしました。
映画の方が、もっと「つながっている」というのを強調しているような気がして、もう少し、救いが欲しかったのかな?なんて思いました。
派手さはないのでエキサイティングな映画ではないですが、
心には染みていく映画だと思います。
配信
Amazonプライムビデオでご覧いただけます。(30日間は無料でおためしいただけます)
*2023年5月11日現在
アマゾンプライム「ムーンライト・シャドウ」原作
吉本ばななの「キッチン」という本に収録されています。
初めて読んだのがこの本で、かなり衝撃を受けました。
「ムーンライト・シャドウ」は映画よりも吉本ばななさんぽさが出ていて(当たり前ですがw)、
映画の監督さんが抽出しなかった部分も描かれているので、
登場人物たちの心情や行動が分かりやすいかと思います。
こちらの方が動きがあるので、またちょっと違った印象になるかもしれません。
個人的には小説の方がおすすめ、です。
人が持つ痛みにじかに触れてくる文章ですが、
強さと希望があるのでせつなくても、最後には笑顔になれる小説です。
吉本ばななさんのインパクトはすごくて、この人の本を読んだ後はしばらく脳内モノローグが吉本ばなな調になってしまいます。初めて読んだ時から、35年たっても同じでした(笑)。